【運営思考】新しいRTAイベント・大会の形式

様々なRTAの見せ方を考えよう

基本的にRTAは1人でゲームをプレイして時間を計測する遊び方なのですが、それを複数名でやることでこれまで様々なイベント・大会が開催されてきました。

その中でも特に多い形式が「駅伝形式」「リレー形式」です。

「駅伝方式」は前回の記事(下記)でも触れた通り、チームを組み、順番に複数のRTAを行って競うのを見せるやり方ですね。

一方、「リレー形式」は文字通り、次々とRTAをリレーして見せる形式で、RTA in JapanやGDQといった主にオフラインイベントで取り入れられているやり方です。

上記2つのやり方が主流で、長く続けられている大会やイベントはこれらの形式を採用しています。

ゲームをクリアする時間を計測することから、実際の陸上競技における短距離走やマラソンなどに倣い、「RTAを走る」という言い方が浸透しているため、「駅伝」や「リレー」といった形式が直感的に分かりやすく、主流になるのは自然なことだと思います。

しかしながら、僕個人としては、あまりそのやり方に満足していません。

もちろん駅伝やリレーの形式が嫌いというわけではないのですが、逆にそれしかやらないのもどうなの?という気持ちがあるのです。

そこで今回は過去にオンラインで開催されていた事例から、まだどこでもやってないけどこういう形で見せるのも面白いかなと思ったやり方を紹介します。

もし運営を行う方の中で「こういうやり方もアリだな」と思ったら、ぜひ企画してやってみてほしいです。

RTAに新機軸を!大会企画のご提案

新しいことを始めるのは不安も多く、二の足を踏んでしまうことがあると思いますが、どこでもやったことが無いことをやる経験はとても大きなことです。一度やってみてダメなら他のことをやればいいし、良いと思ったら継続して開催することで「駅伝」「リレー」に続く新たなRTAイベントの機軸になるかもしれませんよ?

熱い戦い!対戦バトル形式によるRTA

リレー形式の大会でもゲームによっては「並走」として2人(またはそれ以上)でプレイすることがあります。単純な話、並走だけの大会をやってしまおうという形です。

普通に1人でプレイするよりも、タイムを競うという観点から、複数名で走る方が競技性が高まり、追いつけ追い越せの白熱した戦いぶりを見せることができます。

過去に僕がニコニコ生放送で初めて主催を行った「SaGa 1 GrandPrix」という企画があり、各ゲームタイトルごとに1対1で競ってもらう形式で開催させていただきました。

このときは走者の参加方法も少し特殊で、走者自身で対戦したい相手とコンタクトを取って双方の了解を得た後に応募フォームに投稿する形と、一般リスナーの方から「この人とこの人の戦いを見たい!」というリクエスト形式で募集を行い、運営での選考後にこちらから走者に了承を得て実現する形を取りました。

2013年に企画したイベントですが、当時としては「対決企画」というものが珍しく、走者も良い人材が集まり、かつ大差がついた勝負がほぼ無かったため、全般を通して盛り上がっていたのを覚えています。

また、この形式を採用した大会として「ごちゃまぜRTAタイマン対決」でも運営の一員として企画・開催いたしました。

こちらの企画では走者募集は行わず、運営が(勝手に)走者を選出し、競わせる形式を取りました。ゲームごとに当時のニコ生で上位のプレイヤー同士による対決ということで、2日間を通して楽しめた企画になったと思います。

このような対決形式の企画では、駅伝やリレーと違い、配信時間の配分がやりやすく、開催する運営やスタッフにとって負担が重くなりづらい傾向にあります。また、視聴者にとっても比較的見やすい時間帯で全行程を行うことが可能で、どんなゲームであっても競争自体が熱いものとなるため、RTA自体のアピールにもなると思います。

また、バトル形式の大会が可能ということは、トーナメント形式やリーグ戦形式などに派生させても面白いですね。

実際に昨年末の「RTA in Japan 3」にて、「本将棋 内藤九段将棋秘伝」を用いてトーナメント形式で競う企画が行われ、盛り上がりを見せたのが記憶に新しいところです。

ゲームおよびルールの性質上、上記の動画に収まる程度の時間でトーナメントが終わってますが、たとえ1回に数時間かかるゲームのRTAであっても、全行程を1日でやる必要もないので、数日に分けて開催という感じで実現することは十分可能です。

自分に挑戦!自己更新形式によるRTA

RTAには自分との戦いという面があります。speedrun.comなどの記録集に載せる等を目的として他人と競って記録を狙うのもモチベーションの一つとなりますが、自身の過去記録に対して1秒でも早くクリアできれば自己ベスト更新となり、そこだけを目指しているプレイヤーも少なくありません。

そういった自分との戦いを複数名でやってもらおうという企画形式です。

具体的には、一定期間内に既定の回数分だけRTAを行い、そのベストタイムを比べてたり、アベレージを計測して比べる等の方法が考えられますね。

一つ参考になるのはニコニコ生放送で行われた「DQRTA天下一武道会的な何か」という企画で、約1か月の間にDQ1~6のいずれかの作品で計15本のRTAを行って競うというルールで開催されていました。

走者には前もって「出走宣言」を行ってもらった後にRTAを計測し、そこからどんな結果であろうとも1回としてカウントします。 そのため、単純に15回完走すれば良いというわけではなく、事故などによる「途中リタイア」でも回数にカウントされてしまうところが、一種の競技性を高めている要素となります。

「第3回DQRTA天下一武道会的な何か 」の結果一覧より抜粋。
しっかりとリタイアも回数に含まれている。

なお、他の形式と違い、複数人の並走である必要がないため、運営によるミラー配信が不要で、出走申請に対して随時管理を行うのみで、大きな負担となりません。

さらに走者が各自のタイミングで出走することから、参加人数に制限がなく、誰でも自由に参加できますし、視聴者側にとっても好きな配信者を選択して視聴することができるので、大会とはいえかなりフリーダムな催しとなっています。

一定期間終了後には多くのデータが集計されるため、結果発表の配信ではかなり壮観な内容が見せられると思います。

また、タイム計測の他にも使用するチャートや順位などによるポイント制で競う方法も面白いです。こちらも過去に開催されたもので「アンサガラリー」という良い事例があります。

採用されたゲームはタイトル通り「アンリミテッド:サガ」ですが、主人公が7人のうちから1人選択(しかも主人公によってストーリー等も異なる)できたり、攻略方法によっては違うルートが選択できたりと、ただアンサガRTAといっても様々な要素が存在します。

そのため、計測タイムはあくまで順位付けの要素とし、完走した主人公のキャラクター数や攻略ルートによってボーナスポイントが付与されるなど、ただRTAを走るという競技性のみではなく、積極的にポイントを取りに行く戦略性が必要となります。

この形式では1つのゲーム作品やゲームタイトルのシリーズ作品で開催されてきましたが、そういった枠に捉われずに、思い切って「任天堂作品」とか「プレイステーション2作品」というように、いくらでもルールの風呂敷を広げることは可能です(走者の負担が増えそうなので運用方法は考えるべきですが)。

ルールの性質上何度もRTAを行う必要があるため、全体的なRTAの活性化を促すのであれば、こういった形式も悪くないかもしれません。

アイディア次第!ゲーム形式によるRTA

最後に「ゲーム形式」というものを紹介します。

RTA自体がゲームの遊び方なのに、ゲーム形式って何やねん!って話なんですが、TVゲームの話ではなく、ボードゲームとかカードゲームとかそういった類のルールをRTAのイベントに取り入れてみよう!という試みです。

例えば、「将棋」と組み合わせてみる。名付けて「RTA将棋」

まずはRTA走者をそれぞれ駒と見立てて並べていきます。本来の将棋では駒の種類によって動き方が変わり、自陣に20個の駒を並べるのですが、「RTA将棋」では上の画像のように盤面と駒を小さくした方がやりやすいでしょう。また、全ての駒が王将と同じ動き(8方向に1歩ずつ)とし、先手・後手が交互に駒を進めていきます。

さらに本来の将棋であれば、相手の駒に自分の駒を重ねることで駒を奪うことが出来ますが、「RTA将棋」では相手の駒に自分の駒を重ねることでRTAバトルが開始されます。重なった駒の走者2名でRTAを走ってもらい、負けた走者の駒が盤面から消失する、といった感じのルールでどうでしょうか。王将役の走者が負けるとそこでゲームセットです。

・・・実はこのネタは過去のTV番組の企画を元にしたものです。詳しい元ネタが知りたい方は「ジャイアント将棋」とか「ラスタとんねるず」とかでググってみてください。

もしくは同じく将棋をベースに考えるのであれば、複数名のRTA走者を集めてチームを作り、合計2チームで行う総力戦なんかでもいいですね。

普通は先手・後手と交互に駒を進めるわけですが、開始と同時に参加者全員でRTAを行い、1回完走したら自陣の駒を1つ進めることができるルール。とにかく早く完走できればそれだけ多くの駒を動かすことができるので、早い方が当然有利になるわけです。

短時間でクリアできる作品であれば、好きなときに好きなときに動かせる「リアルタイムバトル将棋」により近くなって面白いかもしれません。

大切なのは走者に敬意を払うこと

ここまで適当なこと書いておいてアレなのですが、今までに無い新たな形式でイベントを行う場合、一般の視聴者からすると「これまでに前例が無かった」というだけで途端に「分かりづらい」ものになってしまい、最悪批判の対象となってしまいます。

新しい機軸のものでも受け入れられる条件としては、過去に大会やイベント運営の実績がある、もしくは断固として継続する意思があるということでしょう。

また、どんな形でやるにせよ「RTAを見せる」というのが根本としてあるので、そのイベントに参加してくれるRTA走者に敬意を払って行うのが原則です(当たり前ですね)。単純に見たいからという理由だけでRTAの既存ルール自体に変更をかける、単純に採用する作品・カテゴリーを増やす、などは避けた方が賢明だと思います。

僕個人としては新しい形のRTAイベントがどんどん見たいし、自分でもやってみたい気持ちがあるので、「この発想は無かった」と思えるような企画を考えて実践してみてほしいです。